- この記事のハイライト
- ●領収書や売買契約書を紛失していても、取得費を証明する方法がある
- ●譲渡費用や取得費の額を漏れなく計上することが税金対策につながる
- ●相続不動産の売却では、相続税の一部を取得費に加算できる特例がある
不動産売却時の税金対策について考えたことはありますか?
不動産を売却する際にはいくつかの税金が課されるため、しっかりと対策方法を身に付けておきましょう。
今回は、税金対策のポイントとなる取得費や譲渡費用について、そして取得費が不明の場合の対策方法や、譲渡費用や取得費に加算できる項目についても解説します。
新潟市中央区や東区で不動産売却をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
取得費が不明な場合はどうする?不動産売却時の税金対策とは
不動産売却の際には、印紙税や登録免許税といったいくつかの税金がかかります。
そのなかでも高額になりがちな税金が、「譲渡所得税」です。
譲渡所得税とは、不動産売却によって利益(譲渡所得)を得た場合にのみ課される税金です。
ここでいう利益とは、不動産の売却価格そのものを指すわけではないので注意してください。
譲渡所得の額は、売却価格から不動産を取得するためにかかったお金や売却する際にかかった費用を差し引いて求めます。
計算式にすると次のとおりです。
譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
つまり、取得費や譲渡費用の額が大きくなればなるほど譲渡所得の額が減り、譲渡所得に対して課される税金の対策になると考えておきましょう。
取得費が不明の場合の対策法とは
取得費とは、不動産を購入する際にかかった費用のことです。
そのため、不動産の購入から長い年月がたっている場合や、相続した不動産だった場合などは、取得費が不明となっているケースも珍しくありません。
不動産売却の際に取得費が不明で困っているという方は、次の対策を検討してみましょう。
取得費が不明の場合の対策1:概算取得費を適用する
基本的に取得費は、不動産を購入した際の契約書や領収書などをもとに計算します。
それらの資料から算出された正確な取得費が、「実額取得費」です。
それに対し、取得費が不明の場合には「不動産を売却した価格の5%相当」を取得費とすることができます。
これが、「概算取得費」です。
たとえば、不動産を2,000万円で売却した場合の取得費は100万円となります。
概算取得費は、取得費が不明であっても簡単に取得費を計算することができる方法ですが、実額取得費よりも税額が高くなるケースが多いため注意しましょう。
取得費が不明の場合の対策2:取得費を証明できる資料を探す
不動産購入時の契約書や領収書が残っておらず、取得費が不明の場合には、基本的に概算取得費を適用することになります。
しかし、契約書や領収書以外のもので不動産の購入費用などを証明することができれば、実額取得費の適用が可能です。
取得費を証明するための資料としては、以下のものを、可能な限り多く準備してください。
- 不動産購入のための出金額が明らかに証明できる銀行通帳
- 住宅ローンの支払いが証明できる銀行通帳
- 住宅ローンの契約書のコピーや、住宅ローン償還表
- 抵当権の設定額が記載されている全部事項証明書
- 購入した不動産の価格が記載されているパンフレットなど
これらの資料を、確定申告の際に提出しましょう。
購入時の状況や領収書を紛失した理由などを記載した申述書も併せて提出し、税務署から信ぴょう性があると認められると、概算取得費として受理されます。
その際、売却する不動産が土地の場合は「市街地価格指数」を、建物の場合は「建物の標準的な建築価額表」をもとにした購入当時の推定価額を申述書に記載しておくと、より信ぴょう性を高めることができるでしょう。
概算取得費は実額取得費よりも税金が高くなるケースが多いため、できるだけ資料を集めて実額取得費の適用を目指すことをおすすめします。
不動産売却時の税金対策には譲渡費用の把握が不可欠!
譲渡費用とは、不動産を売却する際にかかった費用のことです。
取得費と同じく、譲渡費用も税金対策の際にとても重要な意味を持ちます。
譲渡費用に含まれる項目
譲渡費用に含まれる主な項目は、次のとおりです。
- 不動産売却の際の仲介手数料
- 不動産売却の際に売主側が負担した印紙税
- 不動産売却の際の登録免許税や司法書士への報酬
- 貸家にしていた不動産を売却するために支払った立ち退き料
- 売買契約の締結後、より良い条件で不動産を売却するために支払った違約金
- 不動産売却のためにおこなったリフォーム費用
- 不動産売却のために実施した広告宣伝費
- 土地を売却するための建物の取り壊し費や、取り壊した建物の取得費相当額
譲渡費用とは、不動産を売却(譲渡)するために直接支払った費用のことです。
そのため、固定資産税や不動産の管理費などは譲渡費用には含まれません。
リフォーム費用や建物の取り壊し費に関しても、不動産売却と関係のないタイミングで実施したものは譲渡費用の対象外となるので注意しましょう。
そのほか、譲渡費用に含まれない項目は次のとおりです。
- 売却した不動産から移転先の引っ越し費用
- 移転先の購入費、リフォーム費用など
- 譲渡代金を取り立てるための費用
- 抵当権抹消費用
これらは、不動産売却時に支払ったものであっても譲渡費用には含まれません。
とくに抵当権抹消費用は、譲渡費用と誤解される方が多い項目です。
そのほかの項目に関しても、譲渡費用に含まれるかどうかの判断が難しい場合は、税務署に一度相談してみましょう。
相続税も取得費に加算できる?不動産売却における税金対策!
不動産売却時には、該当項目をしっかりと譲渡費用や取得費に加算し、譲渡費用の額を減らすことが税金対策につながります。
取得費に含まれる項目
取得費に加算できる項目は、次のとおりです。
- 不動産を購入した際の仲介手数料
- 不動産を購入した際に買主側が負担した印紙税
- 不動産を購入した際の登録免許税や司法書士への報酬
- 不動産取得税
- 不動産購入時に支払った立ち退き料や移転料
- 不動産購入のための建物の取り壊し費
- 不動産購入時に支払った整地費用や、土地測量費、地下道設置費用など
- 売買契約の締結後、ほかの不動産を購入することになった場合に支払う違約金
- 増改築などのリフォーム費用
リフォーム費用は金額が大きくなる場合が多いため、取得費に加算すると税金対策として効果的です。
なお、土地と建物の購入にかかった費用の配分をもとに、諸経費に関しても土地と建物に配分されます。
建物に配分された諸経費は、建物の購入費と同様に減価償却の対象となるので注意してください。
相続不動産の売却には取得費加算の特例を利用しよう
相続した不動産を売却するのであれば、「取得費加算の特例」を利用して税金対策できる場合があります。
取得費加算の特例とは、相続税の一部を取得費に加算できるという特例です。
取得費に加算できる税金の額は、以下の計算式で求めることができます。
取得費に加算できる相続税の額=相続税の納税額×相続税課税価格の基礎となった譲渡した財産の価格/(相続税の課税価格+債務控除額)
取得費加算の特例を適用するための要件
特例によって相続税の一部を取得費に加算するためには、以下の要件を満たしている必要があります。
- 相続や遺贈によって、財産を取得した者であること
- その財産を取得した人に、相続税が課されていること
- 相続した翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
相続税の申告期限は、相続が開始されてから10か月です。
そのため、取得費加算の特例を利用するには、相続から3年10か月以内に不動産を売却する必要があると理解しておきましょう。
相続人が複数いる場合は遺産分割協議が長引く可能性もあるため、特例による税金対策を考えているのであれば、時間に余裕をもって不動産売却を進めてください。